歯科医院のレセプトをサポートする八木屋のブログ

「決められない患者たち」

皆様、こんにちは! 歯科医院をサポートする八木屋です!
今日のブログは以前買った本の書評(?)らしきものを書いてみます。
「決められない患者たち」を読んだ。
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歯科界に携わってから8年近くの年月が過ぎ、歯科医師側の立場がほんの少し解るようになった私は、この書を通じてビジネスとして患者にどのうように向き合うべきか?再考する機会に恵まれた。
本書はアメリカを舞台にした医療(医科の)を受ける患者の選択の過程をまとめた書であるが、読み進めてみると歯科との共通点も多い。そこで、この本を通じて感じた事を歯科に置き換えて自分なりに考えてみた。
医療(医科も歯科も)は、患者側から見ると複雑な選択の科学である。同一病名(疾病)であったとしても個々の発症時期や症状も違い、選択した治療法によって治療結果にも違いが生じる。それは患者が望むか?望まないか?の違いを超えて、時には不幸な結果を招く事さえもあり、つくづく医療は諸刃の剣だとも思う。
歯科医療を受診するにおいて、積極的介入を良しとする患者、低侵襲を良しとする患者、また、歯科医療に対し不信感を持った患者と信頼をおいた患者とでは、歯科医療従事者が果たせる役割が違う。それに加え保険診療か?或は自費診療か?の制度の違いも加わり、しいては経済的な要因も付加されて、歯科医療従事者が思う以上に患者は難しい選択や決断を迫られているのだろう。
溢れるばかりの情報の中からどの医院(医師)?、またどの治療法を選択するか?患者にとってBESTな選択とは何か?治療を受ける入り口から患者にとって難題の山積みだ。私も仕事柄「良い歯科医院はどこか?」との問いを受けることがあるが、しかし、この問いに相応しい回答を提供するのは難しい。
歯科医療の重要性を心の底から理解する一部の患者を除き、多くの患者は「安価で良い治療を!」と願って歯科医院を受診する(或は探す)。軽度の症状や病状であれば「保険診療」でも主訴は解決に向かうだろうが、長期的視点に立って本質的な口腔健康を考えると「処置中心」の保険診療では望むべくも無いだろう。
保険診療の弊害により、医療の本質を考える前に経済的要因等で患者自らが良い治療とは何か?を結果として放棄してしまうことがある。一方歯科医院側も検査回数・処置回数・加療期間等保険診療の制限・制約から、患者の考えや想いが何処にあるか?を知る(或は考える)前に、短期的な視点に立たざるを得なくなる。
国民皆保険は概ね良い制度であるが、予防等疾病を未然に防ぐ機能は未熟である。本来保険医療は予防と治療の両方の観点から制度設計されるべきだ。そうすれば患者も長期的視点に立って歯科医院や治療法を選択出来る可能性が広がる。歯科医療機関側も患者の要望や願いにじっくり耳を傾けて医療に邁進できる可能性も広がるだろう。
現在、歯科疾患は命に直結しない!と多くの人が考えるようだ。その考えは間違ってはいないかも知れないが、人が幸せに暮らして行くには口腔健康は欠かせない。検査・治療に加え予防の選択の難易度の低減は患者の健康を促進し、増大する社会保障費の抑制にもつながるだろう。
ビジネスとして患者にどのうように向き合うべきか?この答えはそう簡単には出ないだろうが、何を望むか?の志向を理解し双方の想いが歪まぬよう、先ずは顧問先に問診・カウンセリング手法から見直すことを推奨してみるか。
現在私が提供している問診票は小児・成人と2種類、これに性別や年代などのカテゴリーを加えると、患者の真意の入り口に立てる可能性が高まると信じて実行してみよう。また、現在のカウンセリング手法に加え、選択の要因毎にプロセスを分けてみるのも良いだろうか。価値観を育む家族歴、他の疾病や通院履歴の既往歴、そして体験に伴う社会歴に分けてカウンセリングを進めるのも一手かも知れぬ。
最後に、本書は歯科医療従事者の皆さんに是非読んで頂きたい。きっと、皆さんが患者と向き合う上のヒントが鏤められている。